XTCの歩み1966-1999~彼らはいつどこでなにをしたか~ 第2回

藤本成昌さんが作成したロックバンド・XTCの活動年譜を掲載していく連載「XTCの歩み 1966-1999 ~彼らはいつどこでなにをしたか~」。第2回は1983年の記録です。前年でツアー活動を止めた彼ら(第1回参照)は、その後どのような道を歩んだのでしょうか。当時の在籍メンバーは、アンディ・パートリッジ(Vo, G)、コリン・モールディング(Vo, B)、デイヴ・グレゴリー(G, Key)です。

文=藤本成昌

 
連載にあたって
第2回は1978年パート1の予定でしたが、筆者の都合により1983年を掲載します。1982年、アメリカ・ツアーのキャンセルに続きアンディが今後のツアーを一切拒否したことから、オリジナル・メンバーのテリーは脱退し、バンドは借金を抱え込みます。次第に威圧的になるレコード会社との軋轢が高まる中、1983年、XTCは6枚目のアルバム『Mummer』を発表します。

凡例
●ほとんどの出来事は、「いつ・どこで・だれが・なにをしたか」の基本要素で構成されています。
●特に断りのない限り、「どこで」はすべて英国です。
●1975年7月にヘリアム・キッズがXTCに改名してからの「だれが」は、特に断りのない限り、すべてXTCです。
●1990年に東ドイツと西ドイツが統合する以前の「ドイツ」は西ドイツを指します。
●カタカナ化した固有名詞は慣例的な表記ではないことがあります。
●「▼」は下の当該日を見よ、「▲」は上の当該日を見よ、を意味します。
 

 

第2回:1983年

 
 
1983年1月3日(月)
ロンドン、ハムステッド、エア・スタジオ
スティーヴ・ナイが「Love on a Farmboy's Wages」、「Human Alchemy」、「Me and the Wind」、「Ladybird」、「In Loving Memory of a Name」、「Funk Pop a Roll」、「Jump」をミックス。アシスタントはギャヴィン・グリーナウェイ。また、「Beating of Hearts」と「Wonderland」がリミックスされる。
バンドがマネージャーのイアン・リードを見るのはこの時が最後となる。
 
1983年1月14日(金)
アンディ、BBCラジオ1の番組『Roundtable』にゲスト出演。DJマーク・エレンと話す。
 
1983年1月20日(木)
スウェーデンTV1テレビの音楽番組『Rockextra』がXTCその他をフィーチャー。
 
1983年1月下旬
アルバムのタイトルを『Fallen from the Garden』にしたまま、レコーディングが完了した9曲に「The Procession Towards Learning Land」、「Frost Circus」、「Jump」を加えてヴァージンに提出。ヴァージンはもっと売れそうな曲を作るよう要求。
デイヴ:「ミックス前のカセットにはシングルの候補曲が頭に入っている。「Wonderland」と「Love on a Farmboy's Wages」だ」(2000年5月、筆者へのメール)
 
1983年2月下旬
XTCとピート・フィップズ:ロンドン、オデッセイ・スタジオ
「Great Fire」と「Gold [Version Two]」のレコーディングとミキシング。プロデューサーはボブ・サージェント、エンジニアはマーク・ディアンリー、アシスタント・エンジニアはマーセラス・フランク。
 
1983年3月17日(木)
フランスのテレビ番組『Les enfants du rock』がHouba Houba London SpecialコーナーでXTC特集。司会はアントワン・ドゥ・コーヌ。スイスでも同時に放送される。XTCとピート・フィップズによる「Beating of Hearts」と「Wonderland」の口パク演奏とアンディとコリンのインタビュー映像。撮影場所はロンドンのユーストン・センターにあるスコーピオ・サウンド・スタジオ。撮影日不明。
 
「Beating of Hearts」 / インタビュー /「Wonderland」(『Les enfants du rock』1983年3月17日放送)

 
1983年4月2日(土)
アンディ、自宅にてBBCラジオ1の『Saturday Live』のインタビューに応える。
 
1983年4月5日(火)
アメリカ人DJジョージ・ギマークがアンディの自宅でアンディとコリンをインタビュー。1984年にカナダのXTCファンクラブの会報に2回にわたって掲載される。
注記:当時ギマークはテキサス州ダラスのKZEW-FMで『The Rock & Roll Alternative』という番組のホストだった。

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ジョージ・ギマークのラジオ番組用に編集されたと思われるアンディとコリンのインタビューを収めたテープ。箱に書かれてある日付「1983年4月8日」と曲順に注目


1983年4月18日(月)
アンディ、BBC Westのテレビ番組『RPM』にゲスト出演。パブでアンディ・バッテン=フォスターのインタビューを受け、主にツアー、音楽業界、「他の人たち」、病気で倒れた後の鬱病などについて話す。1985年11月15日再放送。
 
1983年4月22日(金)
シングル「Great Fire」リリース。
 
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1983年5月
ロンドン、RAKスタジオ2
プロデューサーのアレックス・サドキンとエンジニアのフィル・ソーナリーが「Wonderland」、「Funk Pop a Roll」、「Deliver Us from Elements」、「Human Alchemy」をリミックス。
 
1983年5月16日(月)
ロンドンでフォト・セッション。
 
1983年5月18日(水)
テレビの特番ドキュメンタリー『XTC Play at Home』についてチャンネル4とのミーティング。
 
1983年6月
日本のビクター・レコードがイギリスのヴァージンとスティッフ・レコードに所属するアーティストのプロモーションとして「World of British Power」と銘打ったキャンペーンを立ち上げる。
注記:特定のLPを購入し、そのタスキについているクーポンを5枚切り取って9月20日までにレコード会社に送ると、特製カセットテープ『Virgin Special Menu』がもらえた。テープには日本では未発売の曲ばかりが収録されており、XTCのトラックは「Blame the Weather」(「Senses Working Overtime」シングルのB面)だった。ビクターは1年後に「British Power ’84」という、同じようなキャンペーンを行うが、カセットのプレゼントはなかった。
 
1983年6月11日(土)
DJマイク・リード司会のBBC1テレビ番組『Pop Quiz』で、XTCの「Statue of Liberty」のライブ映像(1978年3月25日▲)とともに「XTCのシングルでチャートのトップ20に入ったものをひとつ挙げよ」というクイズが出題される。回答者の一人ニック・ヘイワードが「Making Plans for Nigel」と正答。
 
1983年6月13日(月)~14日(火)
ハートフォードシャー、ハットフィールド・ハウス
「Wonderland」のプロモ・ビデオ撮影。
 
「Wonderland」プロモ・ビデオ

 
1983年6月20日(月)~ 24日(金)
1983年6月27日(月)~ 28日(火)
チャンネル4のスタッフが『XTC Play at Home』の撮影のためにスウィンドンを訪れる。
XTCはペグズ・パントリー(食堂)で学生たちからインタビューを受け、メンバーはそれぞれ自分の趣味を紹介する。スウィンドン周辺で『Mummer』収録の5曲――「Beating of Hearts」、「Love on a Farmboy's Wages」、「Human Alchemy」、「In Loving Memory of a Name」、「Funk Pop a Roll」――のミュージック・ビデオが1日1本のペースで撮影される。1983年末か1984年初頭に放映される予定だったが、1984年10月16日▼までされなかった。
 
1983年6月
アンディ・パートリッジ:エイヴォン、バース、クレセント・スタジオ
アンディ、ピーター・ブレグヴァッドのアルバム『The Naked Shakespeare』のほぼ全曲をプロデュース。コリンは1曲でベースを弾く。10月リリース。
 
1983年7月6日(水)~ 8日(金)
ロンドンのチャンネル4で『XTC Play at Home』の編集。
 
1983年7月11日(月)
シングル「Wonderland」リリース。

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1983年7月11日(月)~?日
アンディ・パートリッジ:エイヴォン、バース、クレセント・スタジオ
『The Naked Shakespeare』のミキシング。
 
1983年8月?
デイヴ・グレゴリー:ロンドン、RAKスタジオ2
デイヴ、ズィーク・マニイカ(オレンジ・ジュースのドラマー)のために「Heaven Help Us (Try)」、「Everywhere I Go」、「Red Hot (Internationally!)」、「Kelvingrove」、「This Lamp」でギターとギター・シンセを弾く。シングルとアルバム『Call and Response』に収録される。
デイヴ:「RAKの第2スタジオは一番好きなスタジオのひとつだ。XTCはそこでフィル・ソーナリーと『Mummer』と『The Big Express』をミックスした。」(2001年8月、筆者へのメール)
 
1983年8月3日(水)~ 4日(木)
エイヴォン、バース、クレセント・スタジオ
「Desert Island」のヴォーカル、「Toys」のヴォーカル、玩具、ハーモニカのレコーディング。デヴィッド・ロードがそれらをミックス。アシスタントはグレン・トミー。
 
1983年8月4日(木)
音楽紙『メロディー・メイカー』が8月6日号でテリー・チェンバーズのXTC脱退を報じる。今後XTCは残る3人で活動を続け、チェンバーズの後任は探さない、XTCは二度とライブをやらない、とも。
 
1983年8月24日(水)
アンディ、BBCラジオ1のリチャード・スキナーの番組にゲスト出演。
 
1983年8月30日(火)
6枚目のアルバム『Mummer』リリース。
 
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1983年9月
アンディ・パートリッジ:エイヴォン、バース、クレセント・スタジオ
アンディ、2週間ほどかけて映画『Liquidream』(後に『Ocean’s Daughter』と改題)のサウンドトラックをレコーディング。プロデュースはデヴィッド・ロードと彼自身。エンジニアはグレン・トミー。
注記:『Ocean’s Daughter』の脚本、製作、監督はスウィンドン在住の歯科医/水中写真家マイク・ポーテリー(2007年没)。1983年11年3日公開。タイトルの「Ocean's Daughter」役はローレン・ヘストンが演じた。アンディはこの主に水中で撮影された28分の短編映画のために少なくとも20曲を作曲、演奏、録音した。「Aqua Deum」だけはあとでロンドンのオーリー・スタジオで録音されたらしい。
録音された曲:Submerge/Travel; Title Theme; Wall of Water; New Breath; Sea of Storms; Beckoned to the Egg Chamber; Birth; The Familiar; Girl in Water Colours; Napoleon; Washed in Air; Small Fish Are Singing; Jewel Fall; Primal Gallery; The Larder; Brought to Bare; Meeting/Parting; Title Theme (End); We Trust the Water; Aqua Deum. 
どこで聞ける?:「Title Theme」は「Ocean's Daughter」と改題されて『Fuzzy Warbles #1』に収録されている。「Aqua Deum」は『Fuzzy Warbles #5』収録。他は公式リリースされていない。
 
1983年9月19日(月)
シングル「Love on a Farmboy’s Wages」リリース。

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1983年9月23日(金)
アンディ、BBCウィルトシャーのラジオ番組にゲスト出演。アラン・バーストンと話す。
どこで聞ける?:アンディはバーストンの番組のために「Hey, It’s Alan Burston!」と「Please Alan Burston」の2つのジングルを作った。前者は『Fuzzy Warbles #4』に収録されている。
 
1983年10月4日(火)
スウィンドンでインタビューとフォト・セッション。
 
1983年10月9日(日)
フランスのTF3テレビチャンネルで音楽番組『L'écho des bananes』がXTCらをフィーチャー。同時にベルギーのTF3チャンネルでも放送される。
 
1983年10月12日(水)
シングル「Thanks for Christmas」のためのフォト・セッション。
 
1983年10月13日(木)
シングル「Thanks for Christmas」のリハーサル。
 
1983年10月14日(金)~ 16日(日)
ベルギーでプロモーション。テレビ番組用の録画など。詳細不明(11月11日▼参照)。
 
1983年10月17日(月)~ 19日(水)
エイヴォン、バース、クレセント・スタジオ
デヴィッド・ロードと「Thanks for Christmas」と「Countdown to Christmas Party Time」のレコーディングとミキシング。21日と22日に続きの作業。11月21日リリース▼。
 
1983年10月20日(木)
ウェスト・ミッドランズ、バーミンガム、BBCペブルミル・スタジオ
BBC1テレビの昼の番組『Pebble Mill at One』で「Love on a Farmboy's Wages」の口パク演奏が生放送される。

「Love on a Farmboy's Wages」(『Pebble Mill at One』1983年10月20日放送)


1983年10月?
オーストラリアで『Mummer』がリリースされる。カセット版はA面に「Gold」を追加収録。
 
1983年10月下旬/11月上旬
ヘルシンキにヴァージン・フィンランドが開設される。配給はポラーヴォックスからディスコフォンに移行。
注記:XTCのフィンランド盤にはポラーヴォックスからリリースされた『Black Sea』と『Waxworks』がある。ポラーヴォックスは元々1973年にレーブというレコード会社として設立された。
 
1983年11月3日(木)
『Sounds』紙11月5日号:「アンディによると、テリー・チェンバーズはオーストラリアのドラゴンと呼ばれるヘビメタバンドに加入した。アンディはセロニアス・モンクのトリビュート・アルバムのためにトーマス・ドルビーとコラボするかもしれない……ドルビーは少し前にMTVの特番でアンディに観客の前でハーモニカを吹かせることを企てた。今回は成功するよう祈る」
 
1983年11月10日(木)
音楽雑誌『No. 1』が11月12日号で「Love on a Farmboy’s Wages」シングルを読者20名にプレゼント。
 
1983年11月11日(金)
ベルギーのBRT2テレビチャンネルの番組『Pop-Elektron』で、空っぽの劇場で行われたバート・ペータースによるインタビューがプロモ・ビデオを交えて放映される。特筆すべきは1978年にベルギーで撮影された「Statue of Liberty」のレアなライブ映像(1978年3月20日▲)。オランダのベルギー番組チャンネルでも同時に放送される。おそらく11月20日にベルギーとオランダで再放送された。
 
「Making Plans for Nigel」/ アンディのインタビュー(AP)/「Statue of Liberty (live)」/ AP / 「Are You Receiving Me?」/「Senses Working Overtime」/ AP /「Wonderland」(『Pop-Elektron』1983年11月11日放送)
 

1983年11月16日(水)
アンディ、BBCウィルトシャーのラジオ番組に出演し、マーク・ブラッドリーと話す。
 
1983年11月中旬
ドイツのテープ・メーカー、アグファがイギリスでビデオ・コンピレーション『Agfa Video Pop ― 21 Original Chartbusters』を180分の録画用VHSテープ(または195分のベータ)とセットにしてリリース。ビデオには「Making Plans for Nigel」をはじめ、ヴァージン所属アーティストのプロモ・ビデオが21トラック収録されている。小売価格は16.99ポンド。
 
1983年11月21日(月)
The Three Wise Men名義でシングル「Thanks for Christmas」リリース。
 
1983年11月29日(火)
オーストラリアABCテレビの音楽番組『Rock Arena』がジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダー、ザ・クラッシュ、ザ・キンクス、XTCらのミュージック・ビデオを放映。司会はアンドリュー・ピーターズ。
放送された曲:This Is Pop; Life Begins at the Hop; Making Plans for Nigel; Heatwave; Respectable Street; Senses Working Overtime; Ball and Chain.
 
1983年12月11日(日)
アンディ、BBCラジオ1の『The Great Rock ’n’ Roll Trivia Quiz』に出演。司会はデヴィッド・ジェンセン。
 
1983年12月17日(土)
アンディ、BBCラジオ1のジャニス・ロングの番組に出演。
 
1983年12月?
フランスのテレビ番組『Les enfants du rock』がHouba Houbaコーナーの1983年の総集編で「Senses Working Overtime」のプロモ・ビデオなどを放映。司会はアントワン・ドゥ・コーヌとジャッキー。




藤本成昌

パートタイム翻訳家。訳書に『XTC: チョークヒルズ・アンド・チルドレン』(1993年)、『ロング・ムーヴメンツ:ロバート・ワイアットの足跡』(1997年)、『XTC: ソング・ストーリーズ』(2000年) あり。小冊子『Fossil Fuel+: The XTC Singles 1977–1999』(1999年)ではイギリス原盤の全シングルを紹介した。英語版XTCディスコグラフィ(1991〜1997年)とクロノロジー(2011年/2023年) はXTCのメンバーにも重宝されている(らしい)。現在、70年代の英国音楽の埋もれた歴史を掘り出した「レトロ英字新聞」の発刊を準備中。