妄想映画日記 その150

樋口泰人の「妄想映画日記」150回目の更新です。1年がかりの書籍『青山真治クロニクルズ』の完成、DOMMUNEでの中原昌也さん緊急支援番組、boid関連作品の初号試写、娘の結婚式、『青山真治監督に声を届ける会』の開催と怒涛の日々によりメニエルの発作が出てしまった3月後半の日記です。
表紙.jpg 173.5 KB



文・写真=樋口泰人



3月16日(木)
いろんな催しの準備が大詰めを迎え、いくつもの連絡ミスをしているのではないかという不安ばかりで身動き取れなくなる。これだけいろいろやったんだからもういいじゃないかと開き直ることがなかなかできない。そしておそらく開き直った瞬間にとんでもないミスが発覚するという根拠のない確信だけが身体の動きをさらに重くする。仕事はなかなか進まない。午後からは銀行案件、そして中原支援バンドキャンプで集まった基金の整理の件など。まだまだ長い道のり。途中で息切れしてもいいように、その後の準備もしておけたら。
 


3月17日(金)
『青山真治クロニクルズ』がついに出来上がる。まだ見本誌で書店発売は4月になるのだがとりあえずとにかくこの1年の作業がこれでほぼ終わりを迎えたということである。感慨深い。昨年9月のPFFに向けて、と言うことで作業は始まった。もちろん間に合わずせめてTIFFにはということになったが間に合わず、12月のアテネ、2月の仙台と締め切りは崩れていき、ようやく命日にぎりぎり間に合った。青山のパソコンの中に自身の年代記の目次が見つかったことでこの本の形式が決まったわけだが、人間の一生はそう簡単にまとまるものではなかった。当たり前だろ、と青山に怒られながらの1年ということになるだろうか。
この本へ参加してくれた方々へのリトルモアでの発送作業を見届け、恵比寿ガーデンシネマへ。本日から、昨年のTIFFでDCP化された『エリ・エリ・レマサバクタニ』の1週間限定上映である。21日の一周忌もあるしいろんな関係者のトークとともに、ということも考えたのだが、それをやっているとこちらの体力気力金力がまったくもたない。それでも何かと考えていたところに「そういえば以前『エリ・エリ』上映したときに青山さんと蓮實さんの対談があってそれの録音がありますよ」という天使の声。今回はその載録と、美術の清水さんが毎回の撮影の度に各場面の詳細なスケッチを残しているのでそれを掲載した小冊子をということにしたのである。記念として大切にしていただけたら。

3月17日_1.jpg 260.98 KB


ガーデンシネマの支配人に挨拶をしてDOMMUNE会場に向かう。本日から2日間、中原昌也支援配信なのである。本日は音楽編。わたしは冒頭だけ、中原の出演している『エリ・エリ』の告知を。三田格さん野田勉さんと数年ぶりに会って話をした。三田さんには、三田さんをわたしに紹介してくれた女性も昨年亡くなったとお知らせした。われわれより年下なのに。次はお前の番だと言われているような気がしてならない。
そして横浜へ。シネマリンで上映中の『ユリイカ』の上映後のトーク。その前に飯を食っておかないとということでシネマリンそばのお気に入りの中華屋に行ったのだが、なんとこの日に限り団体の予約が入っていたのかで閉店。愕然として周囲をうろうろ。「孤独のグルメ」の井之頭五郎さんのような野生の勘が働かないものかと天を仰いでも何も降りてこないので、店頭のメニューに見慣れないスープなどが並んでいた中華屋に入ってみた。そこで選んだのが豚肉とノリのスープとライス。これまで生きてきて初めての味わい。片栗粉をまぶして揚げた豚肉のふんわりした歯ごたえは上質のホルモンを食している感触にもちかく、胃の中がほんわりした。つい食べすぎた。

3月17日_2.jpg 164.59 KB


『ユリイカ』のトークはシネマリンの支配人の八幡さんの質問に答える形で、時には暴走しつつ、できたばかりの『青山真治クロニクルズ』の話にまで及んだ。ああしかし、秋彦が聴いている「ゴースト」の演奏者アルバート・アイラーの名前を忘れるという失態。いろんな記憶の回路が途切れていく。まあそれはそれで気持ちいいことではあるのだが。しかし、関内を11時過ぎの列車に乗ると、丸ノ内線の終電にはぎりぎり間に合わないということが分かった。ジャック&ベティ周辺もそうなのだが、シネマリン周辺もいろいろ面白く、ついうろうろ散策してしまうのだった。横浜に住みたいと、この辺りに来るたびに思う。否応なくこの怪しい光と影の中にわたしを引きずり込む天使のような悪魔を希求する。いったい何をしたいのやら。


 
3月18日(土
疲れが出ている。左耳の耳鳴りがやばい感じ。とはいえこうなってくると止められない。夕方からDOMMUNE2日目。パルコのエレベーターのところに上條さんもいて一緒に乗り込むと地上階からは宇川くんも乗り込んできて、すでにテンションが高い。昨夜は朝までになったらしい。今のわたしにはその元気がない。
17時過ぎから始まって23時前終了で約6時間。この日のトークをまとめておくだけで中原昌也をめぐる日本の文化史が見えてくるのではないかという、驚きと発見と展望に充ちた6時間だった。われわれのパートのトークの最後に言ったのだが、かつて一緒に占いしてもらいに行ったとき、中原は占い師から「あなたは老後に紫綬褒章のようなものをもらう。世界を救う」と言われた。つまり、まだまだ仕事はこれからである。復活後、何かとんでもないことが起こるのかもしれない。

3月18日.jpg 158.82 KB



 
3月19日(日)
21日の娘の結婚式のために髪を切りにいかねばならない。いつもの美容室に予約しておこうと思ったのに忙しすぎて忘れ、本日慌てて電話を入れるとすでにいっぱい。どうにもならず、とにかく高円寺の街に出るのだが、日曜日に慌てて探しても見つかるはずもない。1軒だけ、我が家の割と近くに謎の美容室がある。昔はちゃんとしていたのだが、今は外側から見ると閉店した美容室にしか見えない。椅子は荷物置き場になっているようだし店内もぼんやりと暗く、どうして店頭のクルクルが回っているのかよくわからないような状態。店内を覗いてみると遠くの椅子で作業をしているようなので、思い切って入ってみたら普通に対応してくれて、16時からなら空いているという。もちろん普通にちゃんと髪を切ってくれたのだが、「顔を剃りますか?」と言われたのでせっかくなので剃ってらうと返事をしたところ奥の別室に連れていかれた。そこがちょっと変な感じで、あえて言えばデヴィッド・リンチの映画に出てくる秘密の部屋ということになるか、奇妙な空気が漂っている。美容室には必要ないのではないかと思われる謎の機材もおかれている。とにかく右奥にシャンプー台のようなものがあり、その前の椅子に座らされ背もたれが倒されるとなんだか手術台に乗ったような気分になる。とはいえそこからもごく当たり前の手順でことを進むわけだが、髭剃りやシャンプーなどをしている間、目の上にタオルが置かれ周囲が見えなくなるとなんだか異常な眠気に襲われうとうとしてしまう。いや確かに気持ちはいいがこんなにうとうとしなくてもとすべてが上の空で時間の隙間のもぐりこんだような気分になっていると作業が終わりタオルを外されしかしなんだか外された実感がない。部屋が暗いのである。しかもムーディーな青や赤のランプが灯されている。『ブルーベルベット』の赤いじゅうたんの部屋と言ったらいいのか。一瞬、目が見えなくなったのかとドキドキしたがどう見ても部屋が暗く赤や青のランプ。いやこれはこれで悪くはないが、こんな明かりの中で髭剃りとか顔そりとが果たしてできたのだろうか。どうしてこんな照明にしなくてはならないのか。おろおろしているうちに普通の照明が点灯され、そうなってしまうとそれまでのことは跡形もない。ただの部屋である。夢だったのだろうか。
 


3月20日(月)
boidがらみの某作品の初号試写。左耳が聞こえなくなっている。メニエル間近の気配で果たして映画が見られるのかどうか心配になっていたら都営地下鉄の市ヶ谷駅で迷子になった。まあこの辺りの迷子は織り込み済みである。映画は確認のため何度かVimeoでは観ていたのだが、やはりこうやってスクリーンで観てみると別物になっていた。当たり前だがそういうことである。目や耳から日常の情報がどうやったって飛び込んでくる家庭での視聴とは全然違う時間がそこには流れる。その中でわれわれは映画を観ることになるわけだが、では、映画を編集する作業の周りにはさまざまな日常が流れているわけで、一体その中でどうやってこの映画特有の時間を作り出すのか? 編集作業とはいったい何か? あるいは音や音楽が付けられて映画が変わるとしたら、編集作業は何を想定して行えばよいのか? それさえ想像がつかないわたしには映画の製作のどの過程にもかかわることはできないと思うばかりである。

3月20日.jpg 137.68 KB



 
3月21日(火)
子供の結婚式である。朝9時までに青山の式場に。そこで貸衣装に着替え初めて着るモーニング。ひどい緊張はしていないのだが、微妙な緊張感がここ数日続いていて昨夜はついにほとんど眠れずということになり、とにかく今日だけはメニエルの発作が起きないようにと気持ちを落ち着かせていた。式や披露宴の内容に関してはまったく知らされておらずとにかくわたしは座っていればいいのだということなのだという理解をしていた。それでも疲れる。シチュエーションに合ったちゃんとした服を着たせいだろうか。娘からは子供ができたことをいきなり知らされる。どうやら数日前に判明したらいい。孫ができる実感はないが、まあ子供が生まれるときも、似たような感じだったか。妻は太ったからと言って、メニエルのリハビリで公園を走っていたわたしと一緒に走っていた。太ったのではなく子供ができたのだと後に知らされることになるのだが、お互いに自覚はまったくなかった。孫も似たようなものなのだが、この1年くらい、子供たちに我が家の猫の面倒を見てもらいながら我々は旅行に行こうと計画を立てていたその計画はいきなり台無しにされたわけだ。われわれが世話しに行かねばならない状況になってしまったのである。まあそれはそれで何とかなる。そして披露宴は、若者たちが大はしゃぎでもはや二次会と化していた。親の出る幕はない。そういうことだったのかと納得した。

3月21日_1.jpg 159.7 KB


3月21日_2.jpg 202.7 KB


3月21日_3.jpg 186.12 KB


そしてバタバタと恵比寿ガーデンルームで行われている『青山真治監督に声を届ける会』へ。わたしも企画者のひとりなのだが、さすがに子供の結婚式をさぼるわけにもいかず、本番はお任せ。いったいどんな進行になるのか、だれが何を言うのかとかいう心配は無駄だった。悲しみにあふれつつも楽しく、明日につながる会になった。そしてこういう会があると、何年も会っていなかった人たちが再会する。椅子に座る人間がひとりいなくなると運動が始まると言ったのはミシェル・セールだったか。また新しい流れができてくれるといい。終了後、居残った斉藤陽一郎、山田勲生さん、黒岩幹子、廣瀬純と食事。疲れていたので軽く食って帰るつもりが少し長居しすぎた。帰宅後、めまいが始まる。

3月21日_4.jpg 236.73 KB


3月21日_5.jpg 156.82 KB
 


3月22日(火)
午後から事務所で打ち合わせだったのだがめまい止めが効いていてボーっとしている。具合はよくない。左耳もうまく聞こえない。


 
3月23日(水)
起き上がろうとした瞬間から吐き気。もうどうにもできない。メニエルの発作。慌ててめまい止めを飲むが、とにかく吐き気。とはいえ胃の中には吐くものは何も残っていない。それでも吐き気はやってくるからトイレで胃液だけを吐くことになる。吐けば治るものではないことはわかっているので、とにかく落ち着いてめまい止めが効き始めるのを待つ。頭を動かすだけで吐き気がやってくるので、頭の位置を固定したまま動く。一番楽な姿勢で座る。1時間ほど経ったかようやく吐き気が治まり少し楽になってきたところで、寝る。あとは休むしかない。妻に各所キャンセルの連絡をしてもらう。今週いっぱい休むことにする。
 


3月24日(金)
めまい止めは効いている。その間にメニエルのための体操やら散歩やら、とにかく体を動かす。そのことで左耳のところにたまったリンパ液を身体全体に分散させる。阿佐ヶ谷までの散歩道は桜が満開だった。しかし帰り道はしっかり雨に降られびしょ濡れになった。あとは適当にだらだら。

3月24日.jpg 224.75 KB
 


3月25日(土)
朝から雨模様ゆえ特に何もせずまったりと過ごす。ボチボチと江藤淳全集を読んだ。若いころ読んでいたらどうしてこの人がこんなことを言っているのかよくわからぬままだっただろう。今こうやって読むことで全体像が見えてくる。まだ始まったばかりだ。
夕方雨が止んだので高円寺駅前まで散歩に行ったら工事中だった駅の三鷹側の高架下の覆いが外され近々オープンするはずの店舗の様子が露になっている。なんだか下北沢の井の頭線高架下みたいな感じだという印象。カフェがいくつかオープンする。ドトール珈琲店がオープンしたばかりだというのに、駅前がカフェだらけになる。というか今まで高円寺駅周辺は全然カフェが足りなかったからこれくらいでいいのかもしれないが。しかしのんきに散歩のつもりが結構な速足で歩いている。メニエルの症状が出ているときは周りがうまく見えなくなるので変に集中してどうしても早足になるのである。それにまだまっすぐ歩けない。
 


3月26日(日)
猫たちとともに過ごす1日。来年には公開をという某作品のシナリオの改訂版を読む。いよいよやるべきことが見えてきてこれなら何かが伝わる通常の伝わり方はしないがそれゆえに何かが確実に伝わるかもしれないと思えた。予算内でやれるかどうかはわたしにはまだよくわからない。出演者もまだまだ多いから予算も手配も大変だろう。いずれにしても儲かる話ではないことだけは分かる。体調はだいぶ戻ってきたがまだ左耳がダメだ。
 


3月27日(月)
リハビリがてら事務所に行こうとしていたら道に誰かが倒れている。すでに2名ほど介護している模様。近寄ってみると老婆が仰向けになり震えている。救急車を呼ぼうと声をかけると大丈夫だと言う。どうやら糖尿病の低血糖の発作らしい。青山も中原も糖尿で、その他周りに何人もいる。こういう姿を見ると遅くとも40代くらいで老後に向けての生活にシフトしていかないと健康な老後は送れないと若者たちに伝えたくなる。まあ、好き勝手やるのがいいんだよという生き方もあるので何とも言えないところなのだが。とにかく老婆は自宅に連れ帰り砂糖をなめさせることにした。家のそばまで付き添って、あとは最初のふたりに任せて駅へ向かい改札を入ったところで忘れものに気づく。今日は税理士が来るので銀行の通帳などを用意しておかねばならないのだった。家まで取りに帰り事務所へ。リハビリらしい時間を過ごした。
 


3月28日(火)
朝から不調なのは昨日いろんな人と会ったからか。ということで自宅引きこもり。歯医者には行った。口の中が腫れていて予定の治療をできず。入口が悪いとすべての臓器に影響が出る。1年かけてボロボロになった内臓は1年かけて治すしかない。知り合いが電車とホームの間に落ちたとツイートしていた。みんな大変だ。
 


3月29日(水)
うまく眠れず5時過ぎに目覚め、7時過ぎに再度寝て10時に目覚める。元気をだそうとスタローンの試写に行く『クリード 過去の逆襲』。このとってつけたようなサブタイトルがあまりに露骨だなと思っていたのだが、物語はまさにこのサブタイトルの違和感をそのまま引き受けた「過去の逆襲」だった。まさかのスタローンは不出演。もし出ていたらどの役だっただろうかとか、出ていたらもっといびつな映画になっていただろうとかあれこれつい思ってしまうような前半の展開だが、アップが多すぎるのがどうかということは脇に置くとして、主人公の前に不意に現れた「過去」が主人公を自らの過去と決着をつけさせるという展開はそれなりにスリリングで手に汗握るのは、やはり後半のボクシング・シーンが控えているからだろう。ここまで来たらスタローンいなくても映画全体がゆがみ始める。誰もそんなことは思わないかもしれないが、最後の戦いのシーンはソクーロフの新作『独裁者たちのとき』を思い出してしまった。『クリード』のシリーズでのリングは現実のリングでありつつ時間の架け橋のような場所へと変容していき時間は止まり過去も未来も現在もひとつののっぺりした平面の上に広がりだしつまりあらゆる時間が「現在」であるほかなくなる、そんな場所となる。厚みも流れも欠いたのっぺりとした時間の平面としての四角いリングが出現する。そんな霊界でもあり現実界でもある時間と空間の肌触りが『独裁者たちのとき』を思い起こさせるわけだが、クリードは独裁者ではないので目の前の「過去」の攻撃に野生をむき出しにする。そのスイッチが入る瞬間がわかりやすく描かれていてそれはそれで盛り上がろうというものだ。そしてこの数年ほとんど聞いていなかった最新のヒップホップがいろんなシーンで流れてきて耳が震えた。ワーナーの内幸町試写室の音は相変わらずでかかった。しかし例えばこの映画のサントラを、すでに霊界の人であるスコット・ウォーカーがやっていたらどうなるか、みたいなことを妄想する。

CRD3_MainL.jpg 49.13 KB
『クリード 過去の逆襲』© 2023 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.


帰りがけ、昨日のツイートのホームと電車の間に落ちた主に会った。同じ試写を観ていたのだった。会った時はそのことを忘れていてああ昨日彼女の話を我が家でしたのになと思いつつ、いったいそれが何の話だったのか思い出せなかった。思い出していたら電車とホームの間に滑り落ちる気持ちはどうですかと尋ねたのに。何か大切なことを聞くせっかくの機会を逃してしまった心残りで他に何もできなくなった。日比谷公園は桜が満開だった。

3月29日.jpg 220.51 KB
 


3月30日(木)
昼から人の出入りが激しいboid事務所。引きこもりからの乱暴なリハビリという感じか。こうやって打ち合わせたことは頭の中ではあっさり実現していくのだが現実世界での実現は簡単ではない。というか、頭の中で実現させる前に手足を動かすことで本当は何とかなっていくわけだがどうもそこで不具合が起こる。もたついて余計な要素が入り込む。そうこうしているうちに時間が無くなる。考えただけでぐったりしてどんどんひきこもる。わかってはいるのだが。
夜は貝を食いに行った。壊れていた胃腸も少し回復してきた。

3月30日_1.jpg 134.13 KB


3月30日_2.jpg 132.39 KB
 


3月31日(金)
月末の社長仕事。入金を確認し各所へ振り込み。入金された額が基本的に全部出て行ってわたしの給料は残らないのが常である。天を仰ぐしかない。しかも本日は銀行のネット操作のためのパスワード生成器が壊れた。銀行に電話をかけると取り替えるのに2週間くらいかかるとのこと。再び天を仰ぐ。近所のキャッシュディスペンサーで10年ぶりくらいで振り込み操作を行った。
その後事務所にて巻上公一ご一行さまたちと楽しい打ち合わせ。うまくいけば11月に。なんだかバウス時代がよみがえってくるような企画である。こういったことをいい形でやり続けていけたら。しかしそれにしても日本の助成金や文科系の「賞」の賞金が安すぎるという話。アメリカでの賞金の額を聞いて愕然とする。天を仰ぐとか言ってられない桁違いの賞金で、ああ、boidもアメリカに移住して爆音やってたらもしかしてとマジで思ってしまった。日本の貧しさはもう十分わかっているつもりだったが現実はそれ以上遥か彼方に置き去りにされていた。残念ながら生きているうちに何とかなることはあり得ないだろうが、とにかく50年後を目指す改革を、まずは90年代韓国映画に何が起こったかを参考にするのがいいように思う。いずれにしても新しい風よ吹けと天を仰ぐ3月末。



CRD3_Sub1.jpeg 54.99 KB
『クリード 過去の逆襲』
5月26日(金)全国ロードショー IMAX®/Dolby Cinema®/4D同時公開
監督:マイケル・B・ジョーダン
出演:マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャース、ウッド・ハリス、フロリアン・ムンテアヌ、ミラ・ケント、フィリシア・ラシャド 他
製作・原案:ライアン・クーグラー
製作:シルベスター・スタローン
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:creedmovie.jp
映画公式ハッシュタグ #クリード

樋口泰人

映画批評家、boid主宰、爆音映画祭プロデューサー。98年に「boid」設立。04年から吉祥寺バウスシアターにて、音楽用のライヴ音響システムを使用しての爆音上映シリーズを企画・上映。08年より始まった「爆音映画祭」は全国的に展開中。著書に『映画は爆音でささやく』(boid)、『映画とロックンロールにおいてアメリカと合衆国はいかに闘ったか』(青土社)、編書に『ロスト・イン・アメリカ』(デジタルハリウッド)、『恐怖の映画史』(黒沢清、篠崎誠著/青土社)など。