妄想映画日記 その130

助成金申請のためのミーティングに明け暮れ記憶も記録もまばらな樋口泰人の2021年9月1日~15日の日記。あるプロジェクトの工場用地と爆音上映会場の下見や、京都みなみ会館でのboidsound映画祭の音調整についても記されています。
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文・写真=樋口泰人



9月1日(水)、2日(木)
まったく記憶なし。猫の写真だけが残っている。体調は最悪。

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9月3日(金)
13時から助成金ミーティングという予定が入っている。久々に買った「亀戸升本」の弁当の写真が残っているから、午前中に小田急の地下で弁当を買い、事務所に行って13時から経産省がらみの某助成金のためのミーティングをzoomで行った、ということになる。この経産省の助成金の申請が文化庁の10倍くらい大変で、もちろん私には手も足も出ない。言われたことを調べたり確認したりするだけ。あとはスタッフ任せなのだが、諸々の確認や状況の共有などで、ミーティングが平気で4時間くらいかかる。この日も多分夕方まで。終わるころにはくたくたである。助成金額が半端ではないので致し方なし、というところか。

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9月4日(土)
山梨へ。いつものように実家に戻るのではなく、助成金も絡んだboidの新プロジェクトに関する打ち合わせ。とにかく広い場所が必要なのである。空族のプロデューサーでもある笹本さん、そして富田くんも交えての悪だくみでもあるのだが、まあその前に腹ごしらえということで蓬来軒へ。相変わらずの味とボリュームを堪能しながら状況報告をする。やろうとしていることがだれがどう見ても暴挙と言うしかないので半分冗談みたいな感じでばか話が続くわけだが、その流れの中で思わぬ事態となる。この無茶なプロジェクトにおいて最初にして最大の難関と思われた「場所」=工場用地候補が思わぬ形で出てきたのである。見事に「国道20号線」沿い。映画『国道20号線』の風景がそのまま広がる。のどかな場所ではないが、20号線と笛吹川というふたつの大きな流れが、きっと何か思わぬものを運んでくれるだろう。

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その後笹本さんが運営しているカフェ兼コワーキングスペースにて話の続き。地元のフルーツを使ったジェラートがうまい。そしてさらに話は転がる。あとはboidの規模にはまったく見合わない資金をどう集めるか。通常ならこの後は実家にというところなのだが、とにかくわたし自身が介護してほしいくらいの体調なので、日帰りで帰宅。

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9月5日(日)
ぐったりしていた。


 
9月6日(月)
午後からは助成金がらみの銀行担当者との打ち合わせ。原稿を仕上げた。


 
9月7日(火)
カレンダーには午後から宮崎くんとの打ち合わせという記述。たしか、直前になって日付変更やら時間変更やらしたはずだが、果たしてこの日だったか。いずれにしても、今年から来年にかけてのいくつかのプロジェクトについて。ここにきてこれまでのboidの企画とは違う、とはいえこれまでやって来たことの延長線上にはあるが、延長するにもほどがあるだろうというはみ出した企画、プロジェクトが生まれ、どうやらそれらが形になっていく。ありがたいし楽しいことなのだが、金が出ていくばかりの準備段階は同時に別のこともやって稼ぎつつ生き延びないとならない。ギリギリしのいでいけるといいのだが。


 
9月8日(水)
こんな猫さまの写真が残っている。何をしているのだろうか。

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9月9日(木)
本日はこんな写真。

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9月10日(金)
まったく記憶なし。たぶん、延々とzoomの会議をやっていたはず。5時間くらい。


 
9月11日(土)
ぐったりとひきこもってばかりだったので、夕方、散歩した。

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9月12日(日)
いくらぐったりしていたとはいえ、こういう時のために写真くらい撮っていたらと思う。


 
9月13日(月)
昼に事務所で打ち合わせあり。その後永山にあるホールへ行き、爆音上映の可能性があるかどうかという下見。諸条件が重なり合い、簡単ではなさそう。やれるかどうか、判断は持ち越し。相変わらずこのあたりの団地の佇まいはすごい。

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9月14日(火)
猫さまは何を思っているのだろうか。わたしはzoomで延々と打ち合わせをしていた。4時間か5時間。

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9月15日(水)
夕方には京都に出発するのだが、それまではzoom打ち合わせ。まさかこれが、京都に行って3日間、みなみ会館で作業しているとき以外は延々と続くことになるとは、この時は思ってもいなかった。経産省助成金、恐るべし。
夜はみなみ会館。上映順に調整をということで『アメリカン・ユートピア』と『Reframe THEATER EXPERIENCE with you』。ともにこれまで何度となくやってきた映画なのでまったく問題なく、というか、みなみ会館の柔らかめの音のスピーカーがいい塩梅に音の空間を広げ、すっかり疲れ切っての調整だったのにみるみる元気になった。身体にいい音。うまくいくときはこんなものである。boidsound上映ということで、音量も無理して上げていないこともいいのだろう。ひとつひとつの音がくっきり聞こえ、低音もしっかりというかがっつり足元から腰にかけてやってくる。しかし『アメリカン・ユートピア』は曲によって音質のばらつきが実はそれなりにあるのでそんなに簡単な調整ではないのだが、今回はわたしの体調のせいもあって一晩に2本ということにしてゆったりと時間をかけられたのもよかった。やっぱり音の調整は楽しいね。

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樋口泰人

映画批評家、boid主宰、爆音映画祭プロデューサー。98年に「boid」設立。04年から吉祥寺バウスシアターにて、音楽用のライヴ音響システムを使用しての爆音上映シリーズを企画・上映。08年より始まった「爆音映画祭」は全国的に展開中。著書に『映画は爆音でささやく』(boid)、『映画とロックンロールにおいてアメリカと合衆国はいかに闘ったか』(青土社)、編書に『ロスト・イン・アメリカ』(デジタルハリウッド)、『恐怖の映画史』(黒沢清、篠崎誠著/青土社)など。Exne Kedy And The Poltergeists『Strolling Planet ’74』LP &CDが8月11日より発売中。10月22日(金)~24日(日)に高崎電気館で「爆音映画祭 IN 高崎 2021」を開催。