妄想映画日記 その105

boid社長・樋口泰人による2020年6月前半の日記。めまいが先月からさらに悪化、そのうえ腰まで痛め、仕事はもちろん日課の散歩さえままならない日もあったようです。映画を観ることもできないなか、虹釜太郎さんの新作音源や『草月ホールのカーネーション』などに励まされて生き延びた日々が記録されています。
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文・写真=樋口泰人


世界が動き出したのと同時に結局元のめまい生活になった。まったくペースが合わないのだから仕方がない。しばらくはこちらのペースで。それに伴ってSNSなどを見る時間もかなり減った。それはそれで気分がいい。映画はまったく観られず。会議はあまり好きではない。

 
6月1日(月)
目覚めると6時30分。2時間も眠れていないのだが2度寝できず仕方なく朝食。少し腹が膨れると眠くなる。仮眠して11時30分起床。思い切り具合悪い。しかし会社の昨年分の税金類を納めなければならない。本日が納付期限。銀行、郵便局、昼食。そして14時からZOOM会議。会議の途中なんか変なのでイヤホンを付けはずしして気が付いたのだが左耳がほぼ聞こえていない。平衡感覚がなくなる。終了後体操、散歩。久々に中野まで歩いた。北口の飲み屋街はほぼ復活していてどの店も美味そうでこの中のほとんどを味わっていないことを後悔しても遅い。もう40年くらい近くに住んでいるのに。ネットで情報が回ってきたマグロ弁当を買って帰る。食後は倒れるように寝る。22時起床。その後は各所連絡。耳は少し落ち着いてきた。

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6月2日(火)
寝坊。事務所に14時の約束だったが1時間遅れ。今後のboidの計画など。具合は良くない。

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6月3日(水)
少し気分がいい。晴れたせいか。事務所にて『VIDEOPHOBIA』の打ち合わせとインタビューなど。途中でだんだん気分が変になる。夕食途中でめまいの発作。腕を動かすだけでも頭がくらくらして20分ほど固まった姿勢のまま。ようやく収まってめまい止めを飲み落ち着く。早く寝たのだが1時30分に目覚め眠れずそのまま7時くらいまで。朝食を食ってから寝る。

 
6月4日(木)
休養日だが各所への連絡次々に。めまい止めのおかげで気分は落ち着いているのでとりあえずこの隙にやれることをやってしまう。仕事は少しはかどったが当分めまい止めなしではやっていけない。

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6月5日(金)
昨日よりだいぶ気分は良くなる。これまで目を通してなかったメールなどを読み諸々連絡。ただ全部を読むことはできない。そのままになってしまったやりとりもいくつか。致し方なし。気づくと眠っている。夕方散歩。少し気分が良くなり夜は映画を観ようと思ったのだがモニターの画面の中でものが動くのをじっと見ていたら気分悪くなりやめる。気持ちは前向きになってきたものの身体と心のバランスが取れない。深夜、再び軽い発作。

 
6月6日(土)
朝までめまいの不安で眠れず。朝食後再度寝て昼に起床。網戸の網の取り換えや散歩など。夜は姫がやってきて夕食。姫は4月から池袋西武の店舗へ勤務先が変わったのだが、5月末からすでに池袋はすごい人なのだという。来週末の東京の新型コロナ感染者数がどうなっているか。もし増えていなければ、寒くなるまでは何とかなるのかもしれない。

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6月7日(日)
体調少し回復。掃除、散歩など。山梨からサクランボ、北海道からチーズが届く。おいしく食していたら奥歯の詰め物が取れて台無し。

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6月8日(月)
体調はさらに上向いてきたのだがまだパソコンの画面を長時間が観るのがきつくZOOM会議欠席。歯医者など。だいぶ前から右の腰に違和感があってポキポキいっていたのだが、夕方阿佐ヶ谷に向かう途中で痛みが増す。炎症を起こした気配。阿佐ヶ谷で絶品中華を食したので満足な夜だったのだが、とにかく痛くて歩けない。湿布薬などの取り置きがなく何もできないまま明日を待つばかり。

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6月9日(火)
右腰から右足にかけての痛みは少し引いた。しかし打ち合わせのために渋谷パルコまで、電車と歩きで行くには無理がある。仕方なくタクシーをと思ったのだが近所の青梅街道はまったくタクシーの姿がなくこんな時はタクシーアプリを使えばいいのだが残念ながらアプリを仕入れてもおらずもちろん使ったこともない。仕方なく丸ノ内線で新宿。そして新宿駅のタクシー乗り場からパルコへと向かった。屋上はやはり気持ちいいね。光と風が全然違う。屋上でのイヴェントを企画しているのである。課題はいろいろ出てきた。果たして可能か。
気分良くなったのでうろうろしながら渋谷駅に行って電車で帰ろうと思ったものの案の定途中で痛みに耐えられなくなり結局タクシーを拾った。帰宅途中に近所の整骨院に寄ったのだが火曜日の午後は定休日ということで呆然。隣のドラッグストアで湿布薬を買った。帰宅すると虹釜くんから音源とイラストが届いていた。にやにやしながらイラストを眺め音源を聴いた。まだまだ楽しいことはやれる。

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6月10日(水)
本日はほぼ休養。とはいえ各所連絡でそれなりの分量のやり取りをした。風が強い。窓を開けておくといろんなものが落ちる。めまい止めを飲んでいるとそれなりに気分は良くなるのでつい仕事をしてしまい結局身体に負担がかかるため本日から飲むのをやめる。多少くらくらするが今はそれくらいでちょうどいい。まだまだ。

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6月11日(木)
午前中から各所連絡。そして事務所へ。カーネーションのライヴアルバムがカーネーションオフィスより届けられていた。即行で買う予定がぐずぐずしてしまっていたのだった。とにかく聴く。なんだろう、この澄み切った音の配置とバランス。混じりけのない何かがそのまますっと耳元に届けられる。たぶん歌の本質ともかかわっている。その抜けきった音の底辺を弦楽器が支える。2日間のライヴのうち私はホーンの日のほうにしか行けず弦楽器の日の音は今回が初めてでかつてのトニー・ヴィスコンティのような弦楽器の使い方を想像していたのだった。全然違った。弦楽器はエンジンだった。細い糸と糸とが擦れあう小さな震えが塊になって時々地鳴りのような音になる。

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6月12日(金)
久しぶりにハードに仕事をした。やればできるのだがこんなことでは耳は治らないのでとにかく自分の気持ちの赴くままに。しかしこうやって各所に連絡をしていると自分がいかに普段のメールを読み飛ばし勝手に勘違いしいろんなことを忘れ、なかったことにしているかが見えてきてぐったりする。いやあまりの湿気と暑さでぐったりしているだけかもしれない。散歩もままならず。腰の不調で体操もゆっくりと。猫たちはほぼ一日中寝ていて食っては吐いた。わたしも深夜にめまい。やむを得ずめまい止めを飲んで寝た。

 
6月13日(土)
めまい止めのおかげでぐっすり眠れたが、起き上がってもずっと眠い。寝ては起き寝ては起きを繰り返して夜になった。1週間に1日、猫のように寝て何もしない「猫の日」が制定されたらいいのにというしょうもない妄想がわくがまあ、制定されなくても自分で勝手にやればよい。そして再びめまい。

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6月14日(日)
昨日ほぼ寝続けていたおかげか本日はだいぶ楽になった。とはいえ相変わらずの雨なので何をするでもなくぼんやり。いくつかの連絡作業。boidのHPからのコンタクトメールに1時間に2通くらいの割合で迷惑メールが来てうっとうしくて仕方がないのと肝心のメールを見逃してしまうので、コンタクトからのメールの改良を依頼。夜にはまったく来なくなったのでひと安心。便利さはいつもこういう厄介ごとを生む。本来ならしなくていい仕事が増えて一向に身体は自由にならない。


6月15日(月)
深い眠りが断続的にやってきて「断」の時のぼんやりした記憶が繋がれて朝になる。ぼーっとしている。とにかくリハビリをしないとということで事務所に向かうのだが忘れ物をいくつもして結局いったん帰宅して出直し。いつかパジャマのまま外に出そうな勢いである。駅まで来て気が付いたらパジャマ。それもご機嫌な感じがしてうれしいのだがちょっとまだ早い。事務所では各所連絡。ZOOM会議には遅れて参加。パソコンの画面を長時間観ているとくらくら来る。その後虹釜くんのCD-R作りの作業あれこれ気が付くともう夕方である。帰宅して夕食、そのまま寝ていてすでに22時近くになっていた。

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樋口泰人

映画批評家、boid主宰、爆音映画祭プロデューサー。98年に「boid」設立。04年から吉祥寺バウスシアターにて、音楽用のライヴ音響システムを使用しての爆音上映シリーズを企画・上映。08年より始まった「爆音映画祭」は全国的に展開中。著書に『映画は爆音でささやく』(boid)、『映画とロックンロールにおいてアメリカと合衆国はいかに闘ったか』(青土社)、編書に『ロスト・イン・アメリカ』(デジタルハリウッド)、『恐怖の映画史』(黒沢清、篠崎誠著/青土社)など。
boidの新レーベル「VOICE OF GHOST」の公式サイトがオープン。また、7月30日まで配給作品『VIDEOPHOBIA』(宮崎大祐監督)の劇場公開に向けたクラウドファンディングを実施中。