PAN ASIA -Project Mekong 第3回

stillichimiyaのYoung-GによるアジアにおけるHIP HOPの現地調査「PAN ASIA -Project Mekong-」第3回目は先月の日本ツアーで話題となったJUU&G.LEEとの出会いと交流について書いてくれています。

文・写真=Young-G

前回から時間が経ってしまった。何故ならこの記事を読んでくれている人なら知っているかもしれないがつい一ヶ月前のJUU&G.JEEの日本ツアーを成功させる為に超多忙だったからである!

(関わってくれた皆さんありがとう!)

目撃した人なら一発でわかったと思う、言語を超えた音楽性とパワフルなステージングは俺がタイで経験したものそのものだった。日本でも変わらず最高なライブをかまし、ファンや友達も増やし、初めての日本に2人も大喜びだった。今回はあのJUUさんとの出会いについて書こうと思う。

当日のライブ会場

いつも若者で賑わうバンコクの有名ショッピングスポット、チャトチャックマーケットが閉まる頃に隣でオープンするナイトマーケットJJ green marketで、Sirirajah RockersとJUUのライブがあるとの情報を聞きつけバンコクに来ていたMMMと向かった。

向かう途中に突然の大雨でびしょ濡れになっていた。週末の夜で雨でもマーケットは若者で大賑わいしていた。マーケット内はバーやレストラン、たくさんのライブスペースがあり雨も手伝って会場を探すのに少し手間取っていた。するとYouTubeで見て聴いてたYoung Bong のNggaz(彼はいつも抜群のファッションセンスで目立っていた!)を発見して拙いタイ語で話しかけた。

「JUUは今日ここでライブをするの?」と聞くと「そうだよ!JUU知ってんの!?」と笑いながらも少し驚いたようだった。よく見ると少し奥にライブ前のJUUとG.JEEを発見した。初めて見た時のJUUの「本物感」はやばかった。もちろん"Juutube"(JUUさんのYouTubeチャンネルを俺らはこう呼んでいる)で何度もビデオを見ていたのもあるが、ネットで見つけて、こうしてすぐライブに来れる事はすごく楽しかった。気分はまるで十代のヘッズに戻ったようだった。これがしたくて来たんだ!と高まる気持ちを噛み締めていた。

当日のフライヤー

日本で他の国のヒップホップを聴いていると音源以上の情報や感覚まではなかなか得られない。場所や時間、宗教、政治、気候、飲食物、匂い……いろんな物が当然音楽には影響している。タイでタイのラップを聞きながら言語も完璧ではない外国人である自分は、それはどんな場所でどんな人がいてどんな風にこの音が鳴っているのか、それを肌で感じたかった。行った事のない人が一宮に行けばstillichimiyaの音楽ももっと理解出来ると思うし、ジャマイカに行ってレゲエを聞くのもそうだと思う。

そうこうしている間にJUU&G.JEEのライブは始まった。会場は屋根付きだが壁はなく、風通しの良いライブが出来るレストラン、という感じだった。

ライブが始まると座っていたお客さんも前に行ったり、自分のテーブルで立って踊り出す人もいた。タイに行くとクラブでもディスコでもテーブルと椅子は日本よりたくさんある印象で、好き嫌いは別れるがみんなゆっくりライブを見たり座ったりする事がもっと簡単で自由な気がした。ライブはYouTubeに上がっている曲や初めて聞く曲も多数あった。2人の息のあったコンビネーションのラップがタイ音楽やレゲエ、ヒップホップ、トラップ等が融合されたトラックの上で炸裂していた。これはタイでしか聞けない本物のヒップホップだと感じた。

DJは付かず、JUUは自分で音源を再生しながらライブをしていた。壁はないのでお金を払わずに外でも聞く事が出来る場所で外のエリアには十代から二十代前半の若い子達もたくさん集まっていた。そしてみんな「500」と書かれたTシャツやキャップを身につけていた。

これはタイヒップホップのイベントでよく見かけるみんなが着ているブランドだ。後でわかったがこれは"JONE 500"というタイのヒップホップウェアブランドでJJ GREENマーケットに店舗もあるので機会があれば是非みんなにも立ち寄ってほしい。オーナーはJUUさんのライブにもよく出没する元々有名なBMXライダーで日本人の彼女がいたらしく少し日本語も話せる気さくな兄貴、という感じの人だ。JUUさんを始めかなりの数のアーティストと友達でYoung bongなどの若手にも服を提供している。タイヒップホップのイベントに行くと必ず着用している人が沢山いるタイのオリジナルの人気ブランドだ。

アーティストがMVやライブで着ている服も彼らの関係性や情報を探る上で大切な資料だからいつもチェックしている。

"JOHN 500"と言う言葉にはタイにおいて深い意味もあるのだが、それは是非現地で着ている人に聞いて見てほしい。それを含めてまさに"ヒップホップ"なウェアブランドだ。

40分ほどでライブは終わり外でファンと写真を撮っていた彼を発見して話しかけてみた。最初は拙いタイ語で。音楽めちゃくちゃ良いですね!とか僕は日本でDJをしています、とかどこに住んでるんですか?とか。なんとかタイ語と英語を混ぜながらコミュニケーションが取れた。「日本でDJでかけます!」と言ったら笑って「良いねぇ~ありがとう!」と言ってくれた。ダーティな外見とは逆に綺麗な瞳で柔らかい人柄が印象的だった。それからJUUさんのフェイスブックを追いかけ、バンコクでのライブに何度も顔を出して覚えてもらった。ライブの後に毎回話をした。バンコク出身だがイサーンに住んでる事や、コンケーンでバンドを持っている事なども知った。stillichimiyaの事や映画『バンコクナイツ』の事も話した。JUUさんのライブを追いかけると自然とローカルでディープな場所をたくさん知る事になった。それも楽しかった。

そうしてついに僕が日本に帰る事を決めた後、バンコクの僕のアパートに来て一緒に遊んでくれて帰りを惜しんでくれた。部屋にある大量のモーラムやルークトゥンのレコードを見て彼は「Young Gは古いタイの音楽が好きだね、俺も大好きだよ、最高だよね!」と言ってくれた。JUUさんからタイの音楽やタイのヒップホップの事も沢山教えてもらった。そのどれもが日本人はあまり知らないようなディープな情報で一つ一つに興奮した。そしてタイで作り溜めたビートを2人に聞かせたらすごくノッてくれて、「絶対に曲を作ろう!」と言ってくれた。大ファンになったJUUさんとG.JEEにそんな事を言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しかった。僕はビートを彼らに置き土産にしバンコクを去った。しかし帰ってからたった二ヶ月でSoi48の協力もあり、stillichimiya復活ライブのタイミングでなんとJUUさんとG.JEEの来日ツアーを企画する事となった!曲より先にツアーが出来るとは思ってもみなかったが、とにかく最高としか言えないツアーになった。その話はまたいつか。

初めて会った日の2ショット写真

現在はイサーンに戻ったJUUさんとG.JEEと曲作りも進めている。その中で改めて彼らの音楽性に驚いていてリリースする日が本当に楽しみである。音楽の事、日本、タイ、アジアの事、日本でもたくさん話した。"ワンメコンミーティング"や"KAMIKANE3000""Soi48"のパーティーや僕らの活動に本当に理解を示してくれていた。アジアのラップを掘り始めてもうかなり時間が経つがその中でも本当にヤバいと思う人とこうやって一緒に音楽ができる事は何よりの自分にとって誇りだ。旅の途中で1人で途方にくれたり色んなものに打ちのめされた事もあったがタイをベースにした一年の潜入活動がようやく身を結んできた気がした。

YouTubeを飛び出して未だストリートに立ち続けるJUUさんをみんなにも目撃してほしい。Jay-ZやSnoop doggも確かにすごい、しかしまだ知られていないだけでアジアでも世界中どこでも、その国の"レジェンド"と呼ばれる魔法のようなラップで人々を魅了するラッパーは確実に存在しているのだから。

"JUUTUBE"より日本ツアーの様子

Young-G

山梨県一宮町で生まれたムーブメント”stillichimiya”メンバー。DJ,プロデューサー,サウンドエンジニア‥音に関わる様々な活動を展開。ソロ活動としてDJやビートを提供する傍ら、田我流とカイザーソゼ、おみゆきCHANNEL、IS PAAR BAND等のプロジェクトにも参加。2011年フィリピン、マニラのトンド地区でのHIPHOPワークショップを経てから”アジアで独自の進化を遂げるHIP HOP”をテーマにしたMIX CD「Pan Asia」シリーズ(Vol1,2)を製作。日本で流通しないアジア圏のHIPHOPアーティストの招聘や普及活動を展開。2017年に公開され、タイ~ラオスで撮影された空族の新作映画『バンコクナイツ』に楽曲を提供、録音スタッフとしても参加。同映画は毎日新聞映画コンクールの監督賞、音楽賞と言う名誉ある賞に輝いた。タイを中心にラオス、カンボジア、ミャンマー等、メコンの音楽に魅せられおよそ一年にわたり現地で音楽を収集、研究。独自の視点と経験から放たれる音は、リスナーを日常と洗脳から解き、桃源響へと導く。