映画は心意気だと思うんです。 第14回

メリー・クリスマス! ということで、冨田翔子さんが“わが心意気映画”を紹介する本連載の第14回は、クリスマスにまつわる映画のお話です。登場するのは『グレムリン』(ジョー・ダンテ監督)と『ホーム・アローン』(クリス・コロンバス監督)の2本。子供から大人なまで、家族で楽しめる映画としてあまりに有名なこの2作品から冨田さんが考えるのは、クリスマスの孤独について――
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ニワカクリスマス



文=冨田翔子


クリスマスの季節。大の「スター・ウォーズ」ファンである同居人が心底新作の公開を楽しみにしているので、雰囲気を盛り上げてあげようと思い「フォーーース!」とか言って手のひらをかざしていたら、正座させられ説教を食らった。なぜだ、フォースってそういう使い方じゃないのか。
 
そんな休日のある日、朝からインターネットのクリスマス・ラジオを聞いて気分良く揺れていたら、同居人が「あなたって本当に雰囲気が好きよね」と言ってきた。なんだ急に。さらに続けて、「あなたはさ、クリスマスが好きなんじゃなくて、その“雰囲気”が好きなのよ」。失敬な! 確かにツリーを飾ったり、友達とパーティーしたりするほどクリスマス・ハッピー・ピープルになれてはいないかもしれないが、私だってクリスマスを楽しみたいじゃないか。
 
「人をニワカ扱いして!」と抗議すると、「ニワカです」とバッサリ。しかも「そこにしっかり孤独感がでてるよね。世間のムードには混ざれないけど、せめてささやかに楽しみたいという孤独感」。なんだかひどい言われように思えてきた。でも、街を歩くと世間のムードは意外と肌に突き刺さる。テレビのクリスマス浮かれモードに「ケッ」とか思っていても、やはりどこかで寂しいのである。そう、寂しさこそ私が映画を観る原点! ニワカで結構。今回はクリスマスの孤独を考えたい。
 
 
■『グレムリン』(1984)

この映画でまず疑問に思うことは、かわいいモグワイでもおぞましいグレムリンでもなく、ヒロインはなぜこんなにもクリスマスが嫌いなのかということだ。
 
「クリスマスは、1年で一番ハッピーな時なんじゃないの?」という主人公に対し、「そうではない人もいるわ」というヒロイン。そして「みんながプレゼントを開けているときに、カミソリ自殺する人だっている」と、とんでもなく暗い話を続ける。
 
思えば、1年で最も自殺者が多い時期がクリスマスであることを教わったのは、この『グレムリン』であった。さらにヒロインは、「クリスマスを祝うんでしょ?」と聞く主人公に、「そんなの関係ないわ。祝いたくないの。ほかの祭日は無視してもなんともないのに、どうしてクリスマスだけ大げさに祝わなきゃいけないの!」とイライラしてしまう。これはなかなかに重度のクリスマス嫌いである。一方、この会話の流れで最終的にヒロインをデートに誘う主人公の勇者ぶりにも驚かされるのだが。
 
果たして、彼女はなぜクリスマスが嫌いなのか。その理由は映画の後半に明かされる。大量に増えたグレムリンにボロボロにされた街で、倒れたクリスマスツリーを前にヒロインは「クリスマスは大嫌い」と涙ながらに語り始める。
 
「9歳のときのクリスマスだったわ。ママと2人でツリーの飾りつけをしてパパを待っていたわ。でもなぜかパパはいつまで経っても戻らない。クリスマスが終わり、次の日もパパは帰らなかった。警察が探してくれたけど、なんの音沙汰もないまま、ママも私も眠らずに待ち続けた…」。なんだかイヤな予感がする。
 
「ある日大雪が降って、寒くてたまらず私は暖炉に火をつけようとして初めて、においに気付いたの。消防士が来て煙突を壊してくれた。ママも私も猫か鳥の死骸だと思ってた。でも出てきたのはパパの死体だった。パパはね、サンタの服を着てたわ。両手いっぱいにプレゼントを抱えて、私達を驚かそうとしたのね。煙突から入って、滑って首の骨を折り、死んだのよ。それ以来サンタの夢は消えたわ…」。この世に、これほど悲しいクリスマスのエピソードがあるだろうか! もはやグレムリンよりも、ヒロインのこの話が最も怖い。一瞬映るモグワイもこれにはドン引きである。
 
だが、生きていればいいことはある。この後、グレムリンをなんとか退治しようと主人公と協力しているうちに、めでたく2人の恋愛は成就するのである。きっと来年は楽しいクリスマスが待っているはずだ。続編『グレムリン2/新・種・誕・生』(1990)では、主人公とニューヨークで新生活を送っており、彼女は冒頭から弾ける笑顔を見せてくれる。
 

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『ホーム・アローン』

 
■『ホーム・アローン』(1990)

少年がピタゴラ装置を家中に張り巡らし、泥棒を撃退する痛快ムービー『ホーム・アローン』も、大人になってから観てみると孤独映画であることが分かる。兄弟が多すぎるばかりに、自分は愛されていないのではないかと孤独を感じている末っ子ケビンと、近所で人殺しと噂される隣人のマーリーじいさん。互いにひとりぼっちのクリスマスを過ごすことになった二人は、イヴの夜ふと教会で交流を持つことに。自分の方に近づいてくる“人殺し”に驚き怯えるケビンだったが、実際にはじいさんは人殺しではなく、息子と大げんかをしてここ何年も絶縁状態となり、密かに孫娘が参加する聖歌隊の練習を見に来ている孤独な老人なのだった。
 
隣りに座ったじいさんに、今年はいい子だったかと尋ねられたケビンは、「ここんとこ少し悪い子だったんだ。言っちゃいけないことを言ったり。本当は僕、家族のことみんな大好きなんだ。けど、ときどき大嫌いだってつい思っちゃう」と複雑な心情を吐露する。分かるよ、ケビン。するとマーリーじいさんは、「心の底ではみんなを愛してる。でもそれを時々忘れて、みんなを傷つけてしまう。それは大人だって同じだよ」と優しく語りかける。そうなんです、じいさん!
 
そんなじいさんに、話したいなら息子に電話してみなよ、というケビンだが、じいさんは「口を聞いてくれないと思うと怖いんだ」と弱気な姿勢。
 
「どうしてわかるの?」「わからないが、とにかく怖いんだよ」
「そんなに年取って、怖がるのはおかしいと思う」「年は関係ない。怖いものは怖いんだ」
 
マーリーじいさんは、息子に拒絶されることを恐れているのである。今も孤独だが、ここに一撃を加えたら、じいさんはクリスマスにカミソリ自殺してしまうかもしれない。するとケビンは、自分は暗い地下室を恐れていたけど、いざ行って電気を点けたらどうってことなかったんだという実体験を語りながら、「つまり息子に電話してみればいいんだよ。だめだったらだめで、諦めたらいいんだよ。そうすればもう怖がらなくていいしさ」と達観した意見を述べるのだった。この一連の会話のストレートさは、聖なる夜にことさら胸に響くのだ。
 
ケビンはじいさんと握手を交わし教会を後にすると、心にふつふつと闘志が湧き上がり、我が家を狙う泥棒との対峙を決意する。果たしてじいさんは息子一家と再会できるのか、それは観てのお楽しみだ。孤独な者同士の心温まる交流と、それによって取り戻される愛こそが『ホーム・アローン』という派手なドタバタ映画の裏に根付く心意気なのだ。
 
 
さて、“イキフンニワカ女”と命名された私のクリスマスだが、今年はニワカを一歩脱し、初めてクリスマスケーキを予約してみた。いや、むしろニワカ街道を順調に歩んでいるといえるか。もっとクリスマスのよもやま話を書きたいところだが、思い返してもまったくもって大したエピソードがない。サンタのことも特に信じていない子供だったし、プレゼントの記憶もほとんどない。恋人については、別れかけのときにクリスマスが来てしまったので仕方なく一緒に過ごした気まずい思い出くらいだ。……なんだか孤独感が増してきたのでこのへんでお別れしようと思う。メリー・クリスマス&良いお年を。



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冨田翔子

エンタメWebサイト編集部勤め。好きなジャンルはホラー映画。心意気のある映画を愛する。