無言日記 第36回

お待たせしました! 映画監督の三宅唱さんがiPhoneを使って日々撮り続けている映像日記「無言日記」が約1年ぶりに登場です。今回公開するのは今年5月に撮影された無言日記。インスタレーション展「ワールドツアー」と映画『ワイルドツアー』を製作したYCAM(山口情報芸術センター)での約8か月にわたる長期滞在を終え、東京に戻ってくるところから始まります。同じ時期に撮影されたというサニーデイ・サービス「Tokyo Sick feat. MARIA (VaVa Remix)」のPVも併せてご覧いただくとより楽しめると思います。

映像・文=三宅唱

ひさしぶりの無言日記。2017年8月末から2018年4月末までYCAMで滞在制作をしていた。その期間に『きみの鳥はうたえる』の編集や初号があり、ビデオインスタレーション「ワールドツアー」を発表し、映画『ワイルドツアー』を撮り終えた。

「ワールドツアー」は無言日記のゴージャス版(複数人の無言日記をマルチスクリーンに展開するもの)なので、もう延々と無言日記を作っていたようなものだった。4月末に東京での生活を再開してからも撮影は続けていたが、「ワールドツアー」の編集で疲れきっていたのもあり、10月になってようやく編集した次第。

5月はサニーデイ・サービスのミュージックビデオを作っていた。「無言日記」で捉えているような出来事を、ちゃんと三脚を立ててきっちりフレームを決めてiPhoneではないカメラで撮影してみる、というプラン。7Dで50mmレンズ1本。

東京は緑が多い。意外に思われるかもしれないが印象としては札幌市街地よりも多いと思う。雪が降るからだろうか。滞在していたYCAM周辺は自然が多く、目のフォーカスが木々にあうようになっていたのか、東京の緑がよりくっきり見えた。新緑をいい光で撮るために、あまり予定を入れずになるべくいつでも動けるようにして、快晴の日を狙って撮った。当たり前だがiPhoneのような素早さはなく、結局3日撮影した。基本的にはハッピーなビデオになったと思うのだが、宮下公園の破壊という東京の病気みたいな現状を撮ろうとも考えていた。公園そのものの歴史をちょっと調べたら面白かった。

今回の無言日記は、このミュージックビデオのロケハン時にテストで撮ったようなカットが多いかもしれない。

『THE COCKPIT』でシネマ・ドゥ・リールに行った際、併映で1本短編があった。たしか文化人類学を学んでいるという同い年くらいの方が監督で、ジブラルタルのどこかが舞台の映画。そこは人よりも猿の方が多い。要するに植民地問題が先住の猿と人間の関係にスライドしている。そんな説明がされるわけではたしかなくて、最初から最後までただただ猿がフレームの中心に映っているような映画だった印象がある。画面の隅っこに地元の人や観光客が映っていた。猿の肩ナメに人が見下ろすように映る、みたいなカットもあった気がする。いわばドキュメンタリー版『猿の惑星』みたいな映画。

調べたら監督のサイトがあって、映画も全編公開されていた。『Territory』という17分の短編。

https://www.eleanorfilms.com

監督のEleanor Mortimerやそのチームは(女性ばかりだった)、『THE COCKPIT』が大好きだったみたいで、映画祭のクロージングパーティーで彼女らがDJブースに向かい、何をしているのかと思ったらOMSBとビヨンセをかけてくれたりした。っていうような日記、前に書いたっけ??

と思ったら書いてなかった。その時の無言日記の記事はこちら↓

「無言日記」第13回  【新サイト】【旧サイト】

7分ぐらいのところで、ビヨンセ”ALL THE SINGLE LADYS”でめっちゃ踊ってるシルエットの人たちが、彼女ら。

三宅唱

映画監督。2010年に初長編映画『やくたたず』を監督。長編第2作 『Playback』 は2012年のロカルノ国際映画祭に正式出品された。2015年にはドキュメンタリー映画 『THE COCKPIT』 、2017年には時代劇『密使と番人』が公開。雑誌『POPEYE』にて映画評「IN THE PLACE TO C」を連載。現在、監督最新作 『きみの鳥はうたえる』 が公開中。また、YCAM製作の映画『ワイルドツアー』の公開も控えている。